失われた顔



何かで塗りつぶされたようにも見えるほどの不思議な写真である。 しかしよく見ると、女性の顔や髪の毛の輪郭はおぼろげながらわかる。 雪がぱらつく某サービスエリアで撮られた写真である。

エクトプラズムなどによって身体の一部が消されるという写真は数多くあるが、 計ったように顔だけを覆い隠すように現れたものは珍しい。 この写真に写っている女性に対する何らかの訴えかけがあると考えていいと思う。 ちなみに写真提供者の本人は以前にやってしまった2度の中絶による“水子”を意識している。 また解説によると、このように首から上の部分が消えるケースは“水子”による霊障の可能性が高いとしている。

“水子”による霊障という観念はどうも西洋にはほとんどなく、ほぼ日本独自の心霊現象であるようだ (もしかすると“肩凝り”のように、西洋人もなっているがほとんど意識にのぼらない現象なのかも知れない)。 多分観念の起源はかなり古いものであると考えられるが、 1970年代の心霊ブームの一翼を担っていたのが主婦向けのTV番組や女性週刊誌であったりで、 “水子”を取り上げる機会が多かったのが拍車をかけることになったと思っている。 いわば“水子の霊障”は“心霊写真”と同じ土壌から生まれてきたものであり、 中岡俊哉氏の心霊界における業績の一つに数えられるのである。 つまるところ全国至る所にある水子供養寺の歴史は、一部を除いて案外浅いものなのである。



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