走馬灯のように



昭和56年の春、テレビ朝日の『徹子の部屋』に作家の向田邦子氏が出演した 場面をカメラにおさめたものである (ビデオなどという便利なものが普及していなかった頃の画像記録方法である)。 画面を覆うように、鮮明に子供の顔が写し出されている。 しかもこの子供の顔は向田氏本人の少女時代の顔なのである。

この写真を撮ったのは向田氏の一ファンであり、個人的な繋がりは全くない。 つまり向田氏の少女時代の写真を二重写しに撮ろうにも、実物がない訳である。 唯一物理的な説明をするとすれば、テレビの画面上に少女時代の写真を映し、 それをフェイドアウトしながら二人が喋っている場面に切り替えた瞬間をカメラにおさめることが出来れば、 可能かもしれない(ただしこれだけ両画面が鮮明に写るかどうかは全く不明であるし、 少女時代の写真がテレビに映し出されたのかも不明である)。

だがこの写真には後日談がある。この年の8月、向田氏は台湾へ行き、現地の飛行機事故に巻き込まれ、 悲劇的な死を遂げるのである。人が死ぬ瞬間、走馬燈のように自分の過去の記憶が甦るという。 つまりこの写真は向田氏の死を予告し、彼女の生い立ちのフラッシュバックが始まっていたこと を示しているというのである。とにかくこの写真は、特定の個人の不思議な姿が写っており、 それ故に偶発的な条件が非常に少ないものであると言えるであろう。 もし上記の疑問点が確認され、そのような事実がないとなれば、第一級の心霊的な写真となるだろう。



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