山に映る霊



山肌に鮮明に男性の顔が写っている。 ただ、顔の輪郭はなく、山肌に同化しているように写っている。 多分この背景となっている山の中で遭難したか、 あるいは事故で亡くなったかのいずれかの者の霊であると認定できるだろう。

山の霊は、海の霊と違って、霊障を引き起こすものが少ないという。 海の霊は仲間が欲しいのか、生身の人間を死に至らしめるような行為を繰り返すものが多い (“海から無数の手が伸びてくる”話などはその典型である)。 それに対して山の霊は遭難しかかっている者を助けたという話などが比較的多い。 この相違は、その場所に対する危険性の認識差であると考えられる。 山へ登る者の多くは、一歩間違えれば死に至ることを意識して山へ登る。 しかし海へ行く者はそのような認識はまず皆無と言っていい。 この心構えの差が、本当に死んだ場合に出るのだという。 “成仏できない霊”の条件に“自分が死んだことが判らないあるいは判ろうとしない”ことがある。 あながち見当外れな見解ではないと思うのだが。



戻る

inserted by FC2 system